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[時代小説]佐伯泰英:「故郷はなきや 新・古着屋総兵衛(15)」

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 佐伯泰英さんの「故郷はなきや 新・古着屋総兵衛(15)」(新潮文庫)を読了。半年ぶりの新作、シリーズ15巻目。

 今巻はイマサカ号と大黒丸を率いて越南(ベトナム)に向かう鳶沢信一郎と、江戸に残って信一郎ら交易船団の無事を祈る総兵衛の話が交互に登場して話が展開していく。

 越南に向かった信一郎には交易の道筋をつける目的のほか、生きている可能性があると聞かされた総兵衛の母親を見つけるという使命があった。荒れた海で大黒丸で事故が起きたりしたものの、交易船団は越南に到着。さっそく現地の川端次郎兵衛を仲介して嘉隆(ザーロン)皇帝に謁見する。ちなみに川端次郎兵衛は総兵衛とは第8巻で登場した旧知の越南在住の和人である。同時に交易船団の一員として乗船してきた総兵衛の弟の勝幸と妹のふくに母親を探させる。

 一方、江戸では総兵衛暗殺の情報が密偵の北郷陰吉によって持たされた。総兵衛は陰吉や天松、忠吉らに相手の動きを調べさせるが、ここで大活躍するのが湯島神社の元おこもで大黒屋の一員になった小僧の忠吉だ。口達者で機転がきく忠吉は、総兵衛暗殺を引き受けたとされる貧乏浪人の筑後平十郎に近づき、なんと大黒屋に連れて総兵衛と会わせたりするのだが・・。

 総兵衛が大黒屋10代目を継いでから今坂、柘植、池城などが鳶沢一族に加わり、特技をもった人物が多くなってきた(なんだか“水滸伝”っぽく思えてしまうけど)。本作でも今後の物語に登場して活躍しそうな人物が新しく出てきた。少し手を広げすぎた気もするが、著者が総兵衛を通じてどう活躍させるか、お手並み拝見である。

 なお、本書のあとがきには著者自身が総兵衛の母国ベトナムを6年ぶりに再訪したことが記されている。


by kei-u23 | 2018-02-11 17:15 | | Comments(0)