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[本]北方謙三:「岳飛伝(17)星斗の章」

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 北方謙三さんの「岳飛伝(17)星斗の章」を読了。シリーズ17巻目。20巻くらいまで数を伸ばすかなと思ってたけど、意外にもこれが最終巻。これにて「水滸伝」「楊令伝」と続いた「大水滸伝」シリーズは完結である(長かった!)。

 前巻の最後に金軍総帥兀朮を討って自らも瀕死の重症を負った史進だが、驚異的な生命力でなんとか生き残った。しかし深手の傷で二度と戦えなくなった史進は一人愛馬乱雲ともに梁山泊を離れる。向かった先は師の王進に肉体も精神も鍛えられたあの子午山であった・・。個人的には史進が生きていてよかったが、史進本人は林冲のように戦場で死にたかったのかもしれない。

 さて、梁山泊と金国、岳飛軍と南宋の戦いはともに泥沼の消耗戦に陥った。金国は兀朮が討たれたものの、沙歇を中心にまとまり一歩も退かない。梁山泊・呼延凌もなかなか打開策を見いだせない。同じように岳飛軍と南宋・程雲の戦いも互いに戦死者が増えていくだけの膠着状態が続く。一方、許礼が率いる南宋軍が岳飛や秦容が不在の岳都や小梁山に南下の動きを見せる。さらに許礼の南下に合わせて南宋水軍も象の河を目指して移動。それを梁山泊水軍の張朔が追う。このように4つの戦いが緊迫感を増しながら進んでいく。

 呼延凌と秦容は何度も仕掛けるが、十万の精鋭兵を巧妙な手段で軍を動かす沙歇を討つことができない。そこに南宋を退けた岳飛が「盡忠報国」と「漢」の旗とともに義勇軍をつれて北上、ついに呼延凌と秦容に合流する。そして岳飛が沙歇を追い詰めていくあたりは、「水滸伝」や「楊令伝」のクライマックスと同様に、スリリングな展開だ。一気に最後まで読み進む。
 激しい戦いのあと、金国も南宋という国の明確な形はなくなった。梁山泊も役割を終えて残ったのは物流の流れである。呼延凌も秦容も次の道に進む。岳飛も自分の地に戻っていった・・。そして史進がシリーズを締めくくってくれた。

 ところで、北の辺境の地の胡土児は従者2人をつれて蒙古に行ってしまった。胡土児の子孫が蒙古の部族をひとつにまとめてユーラシア大陸に支配する空前の帝国を築くテムジン(チンギス・ハーン)に繋がっていくのではないか。また岳飛伝で登場してきた交易を指揮する日本人の武士、炳成世(へいせいせい)は平 清盛かと思っていたが、出版社のサイト「北方大水滸伝」シリーズをみると、どうやら著者はそう考えていたようだ。著者は大水滸シリーズとは直接関係はないようですが、早くも次の新しい物語の連載を考えているそうです。

・「岳飛伝(16)戒旌の章

by kei-u23 | 2016-06-08 09:23 | | Comments(0)