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[時代小説]佐伯泰英:「新・酔いどれ小籐次(七)大晦り」

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 佐伯泰英さんの「新・酔いどれ小籐次(7)大晦り」(文春文庫)を読了。約半年ぶりのシリーズ7巻目。タイトルにある大晦りは“おおつごもり”と読む。大晦日のことである。

 前巻でらくだから落ちて腰を痛め老いによる衰えを感じた小籐次は、熱海での湯治の効果もあり元の状態に戻った。復帰した小籐次は駿太郎と稽古をするが、駿太郎は以前とは違う(いい意味の)印象を受けた。実父の血筋と養父小籐次の教えもあって駿太郎は立派に育っているし、小籐次の家業でもある“研ぎ”もまだまだ小籐次には及ばないものの、しっかり受け継いでいる。かつて厩番だった小籐次にとって、おりょうという伴侶、駿太郎という息子と一緒に生活している今がもっとも充実している時なんだろう。その一方で、以前は人前で豪快な飲みっぷりを披露した小籐次だが、今巻でもそのようなシーンはない。酒を飲まなくなったら“酔いどれ”ではなくなってしまうけれども・・。

 そんな師走のなか2人の遺体と娘が行方不明になるという火事騒動が起きた。火事の現場には町方も入れないという異例の厳重な警戒態勢がとられる。どうやらただの火事ではないようだが、小籐次の前には老中 青山忠裕の密偵おしんが現れ行方不明の娘の捜索を依頼される。小籐次は行方不明の娘が気になり、現場に行ってみるが火付盗賊改方と出くわしたり、遺体は殺害されたものでお庭番らしいこともわかってきた。詳しい事情を聞かされないまま行方を追わされていることに不満を感じた小籐次は、老中青山忠裕の屋敷を訪ね、老中と差しで話をするのだが。

 火事場騒動のあと、ツボ振りのおくめが再登場する事件を片付けて文政7年は終わった。駿太郎がどう成長していくのか次巻も楽しみである。


by kei-u23 | 2017-03-25 17:55 | | Comments(0)