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[本/時代小説]岩室 忍:「信長の軍師 巻の一 立志編」

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 岩室 忍さんの「信長の軍師 巻の一 立志編」(祥伝社文庫)を読了。多数出版されている信長本のひとつ。著者の作品を読むのは初めてだ。

 本シリーズは全4巻からなる。まず第1巻の本書で書かれているのは信長の元服前、吉法師の時代だ。主人公は吉法師ではなく幼少時代より指導することになった沢彦宗恩(たくげんそうおん)。沢彦は臨済宗大本山妙心寺の第一座となり、後奈良天皇の勅命で三十九世大往持となったエリート僧である。

 長編は吉法師の傅役の平手政秀より吉法師の指導を依頼された沢彦が、実際に吉法師に会って人物を確かめるところから始まる。沢彦のような高僧は戦国大名の軍師・参謀として仕えていたが、沢彦は吉法師を戦乱を終わらすために天が地に送った神と期待し師となることを決めた。一方で沢彦は天下一の軍師と認める太原雪斎と戦ってみたいという考えている。雪斎は今川義元に仕えている軍師で三十五世大住持。つまり沢彦にとっては同門の兄にあたる。沢彦は雪斎が今川が武田や北条と同盟を結んだあと、尾張に向かって西進していることを予想し、それに備えて尾張をひとつにまとめ、今川義元・雪斎に対応するため隣国の“蝮”こと斉藤利政(道三)がいる美濃を引き込むことも模索する。

 吉法師はやがて信長となり、尾張だけでなく天下統一に向かって動き始めていくわけだが、軍師である沢彦がどのあたりまで関わってくるのか。沢彦自身も信長がこれほどまで突き進むとは思っていなくて、ある時から沢彦が考えていた以上の存在になっていったのではないかと思う。

 後半では種子島に上陸した鉄砲が境の商人に渡ってきたのを知った沢彦が見に行っている。沢彦は誰よりも早く鉄砲がこれまでの戦を一変させる可能性を秘めた恐ろしい武器であることを認識した。鉄砲が信長にどう影響していったのかも次巻以降注目したいところだ。

by kei-u23 | 2019-11-16 11:23 | | Comments(0)