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[本/時代小説]佐伯 泰英:「新・居眠り磐音 初午祝言」

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 佐伯 泰英さんの「新・居眠り磐音 初午祝言」(文春文庫)を読了。佐伯通信第50号が入っている。

 坂崎磐音を主人公とした「居眠り磐音」シリーズは、ベストセラーになって足掛け15年、全51巻で約4年前に完結した。その後、磐音の嫡男、坂崎空也を主人公にし西国での剣術修行旅を描いた続編「空也十番勝負」が始まったが、こちらは意外に早く7巻で完結した。両シリーズは双葉文庫から刊行されていたが、その後、居眠り磐音シリーズは加筆修正され「居眠り磐音 決定版」シリーズとして文春文庫から刊行されている。またシリーズからスピンオフした書き下ろし作品を「新・居眠り磐音」シリーズとして出始めた。

 本書はその「新・居眠り磐音」シリーズに属する作品でシリーズ3作目にあたる。じつは新・居眠り磐音シリーズについてまったく知らなくて、本書で初めて知った次第だ。シリーズは居眠り磐音シリーズの登場人物にスポットを当てた短編作品からなっているようで、本書では「初午祝言」は、品川柳次郎、「幻の夏」はおそめ、「不思議井戸」は笹塚孫一、「用心棒と娘掏摸」は向田源兵衛が主人の短編で、これらの作品にはシリーズ主人公は登場しないが、最後の「半日弟子」で金兵衛長屋で住みながら鰻処宮戸川で働いていた磐音が登場する。おそらく「居眠り磐音 決定版」の刊行で作品を読み直した際に、スピンオフ作品のモチーフを得たのだろう。

 5つの短編のなかでもっとも興味深かったのは南町奉行所の年番方与力として、シリーズで度々登場してきた笹塚孫一の若き“見習い”時代を描いた作品だ。孫一は何度も坂崎磐音を自分の部下のようにうまく使ったが、この短編は坂崎磐音と出会うずっと前の時代のことで、孫一が率いる“見習い七人衆”が父親を死に追い込んだ人物に立ち向かっていくというストーリーだ。その孫一の姿からは若いときから度胸と頭脳を持ったただならぬ人物であることがわかる。

 なお、巻末のあとがきでは、著者がクイーンの曲を頻繁に聴いているとあった。著者とクイーンの組み合わせがあまりにも意外すぎたけど、冷戦時代のハンガリー・ブダペストでのライブ映像を見たことがきっかけらしい。著者もその時代のブダペストに仕事で訪れていたことで“縁”を感じたようだ。


by kei-u23 | 2020-03-02 09:23 | | Comments(2)

Commented by yuruteturyojyou at 2020-03-02 09:39
おはようございます。
読みました、磐音!良い作品でした!
空也の方は、中途半端で終わりました。
初めから出さねば良いのにと思いました。
他の作品は、続いているのに何故?
早く再開してもらいたいですね

Commented by kei-u23 at 2020-03-03 00:16
> yuruteturyojyouさん

こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに「空也十番勝負」は中途半端でしたね。著者は体力の衰えを感じて人気シリーズを完結させていますしどうなるのか。空也はその後どうなっていくのか、知りたいところではあります。